
精神腫瘍科
Psycho-Oncology
リエゾン精神科
Liaison-Psychiatry

「脳」と「こころ」の専門家として
精神的ケア・サポートを

精神腫瘍科とは
Department of Psycho-Oncology
当院精神科には
日本サイコオンコロジー学会認定精神腫瘍医が在籍しています
サイコオンコロジー(Psycho-Oncology)は「心」の研究を行う精神医学・心理学(サイコロジー=Psychology)と「がん」の研究をする腫瘍学(オンコロジー=Oncology)を組み合わせた造語で「精神腫瘍学」と訳され、1980年代に確立した新しい学問です。サイコオンコロジーの臨床・実践活動に取り組む専門家をサイコオンコロジストといいます。サイコオンコロジストの役割は、
- 疾病や治療に関する適切な情報を提供すること
- 決して孤立しないように情緒的に支えること
- 治療を続ける上で患者さんを悩ます不眠や不安、気分の落ち込みに対して、精神医学的な治療を含めたサポートを用意し、最善の治療を受けられるように医学的なサポートを提供すること
特にこのような専門的なサポートを患者さんにあわせて用意をする専門医が精神腫瘍医です。精神腫瘍医は、がんの治療に精通し、患者さんとご家族の支援に対して、専門的なアドバイスと最適な薬物療法を提供する知識と技術をもった専門家です。入院患者さんに対しては院内他科と連携しながら、患者さんの気持ちのつらさに対して精神的ケアを行います。外来診療では地域で生活する患者さんやご家族に対して精神的サポートを行い安心して療養できるように支援してまいります。
精神腫瘍科外来では院内各科の紹介だけでなく、他院で治療中のがん患者さんやご家族の相談にも応じます。かかりつけ医にご相談の上、診療情報提供書をご用意いただき当院精神科外来までご連絡ください。また、遺族ケア外来も行っております。
日本サイコオンコロジー学会登録医に関しては下記サイトをご参照ください

リエゾン精神科とは
Department of Liaison-Psychiatry
リエゾン精神科は他診療科に通院・入院中の患者さんのメンタルヘルス不調に対応することを主な業務としています。さまざまな診療科の患者さんに生じた神経精神医学的問題に対して、精神科専門医が他診療科スタッフと協働して診断や治療・ケアにあたることを『コンサルテーション・リエゾン精神医学』と言います。当科は、特にこのコンサルテーション・リエゾン診療に力を入れています。
「リエゾン」とは「連携」を意味します。「リエゾン」は、一般病院においてチーム医療によるトータルケアをすすめていくための大切な概念です。身体の病気に伴って生じる「脳」と「こころ」の問題への対応のみならず、精神的な病気を持つ患者さんが身体の病気を併発した場合の治療対応、救命処置と精神的ケアなど多くの場面で、多職種による「リエゾン」が重要になります。また、精神科の救急医療や急性期医療では地域ごとに医療機関の間での「リエゾン」が非常に重要になりますし、患者さんの地域での生活を支えるためには医療以外の福祉や職域、教育機関などとの「リエゾン」も欠かせません。
このように一般医療および精神医療の最前線で「脳」と「こころ」の専門家としてさまざまな「連携」をとりながら機能する精神科医は「リエゾン精神科医」と呼ばれています。
Q&A
Question1
リエゾン精神科はどんな病気を診療するのですか?

代表的な病気として「せん妄」と「うつ病」があげられます。脳卒中や脳炎など脳の病気だけでなく、多くの身体の病気では全身の炎症、ホルモン/免疫などのバランスが崩れて、脳機能に悪影響を及ぼします。その結果、一般病院に入院する患者さんの10%から多い場合には30%以上が、幻覚を見たり、混乱して興奮するような「せん妄」と呼ばれる非常に苦痛で、患者さんの安全を脅かす精神症状をきたします。手術後にも頻繁に「せん妄」は出現しますし、治療薬の影響で出現する場合もあります。このように表面的には「こころの病」に見える脳の機能異常に対して、脳科学の知識を生かし、身体の病気の担当医と連携して診療にあたります。
また、身体の病気になると「うつ病」になりやすくなることも知られており、その割合はおよそ20~40%程度とされています。身体の病気に合併した「うつ病」では、病気そのものによる脳機能への悪影響と、病気になってしまったことに由来する心理面への悪影響との両面を適切に評価する必要があります。そのうえで身体の状況や使用されている治療薬との飲み合わせなどを十分に考慮し、必要に応じて薬物療法を行いながら、並行して心理的サポートを組み合わせて治療を行います。
その他にも多くの精神的な病気に対応しますが「統合失調症」など各種精神疾患で外来治療中の方が身体の病気で入院が必要になった場合、精神科治療が入院を機に途切れないように通院先の主治医と連携して治療を継続するお手伝いもします。
Question2
「リエゾン精神科医」が病院にいることで、
どのような利点があるのでしょうか?

例えば手術を受ける際、その病院の手術実績は最重要な情報ですが「リエゾン精神科医」がその病院に勤務しているかどうかも術後のケアやサポートの質を評価するための重要な情報です。手術に限らず、さまざまな身体の病気で精神的な症状は出現しますから「リエゾン精神科医」が対応できる体制が病院にあれば、安心して身体の病気の治療やケアを受けることができます。
こんな症状の方は、お気軽にご相談ください

こころの症状
気分が浮かない 忘れやすい 常に不安 集中できない 過度に自分を責める 何度も確認する 長期間の無気力 感情をコントロールできないうつ病、不安障害、強迫性障害、双極性障害などが考えられます。これらは気分の 落ち込み、不安感、集中困難、自責感、確認行動、感情の不安定さなどが特徴です。症状が重複する場合もあります。

からだの症状
眠れない 疲れやすい 冷や汗 動悸 お腹の不調 頭痛 めまい 耳鳴り 貧乏ゆすり 顔色が悪いうつ病、不安障害、自律神経失調症、心身症などが考えられます。ストレスや不安が身体に影響を及ぼし、動悸や不眠、胃腸の不調などが現れるのが特徴です。心の不調により複数の症状が同時に起きる場合もあります。

職場や学校での行動
遅刻が増えた 欠勤・欠席が増えた 会社・学校に行けなくなった ミスが増えたうつ病、適応障害、不安障害、発達障害などが考えられます。気分や不安、集中力の問題により、出勤・登校への抵抗やミスの増加が見られます。「怠けている」と誤解される行動も、精神的な負担による可能性があります。

家庭での行動
会話がなくなった 趣味が楽しめなくなったうつ病や気分変調症、統合失調症などが考えられます。気分や興味の低下、感情的閉塞が背景にあり、日常的な交流が難しくなるのが特徴です。家庭では変化に気づきやすい一方、本人はうまく言葉にできないこともあります。

表情
無表情 ぼんやり 作り笑い 悲しげ 泣き出しそう 元気がないうつ病、統合失調症、不安障害などが考えられます。感情が鈍くなったり、表情に気分の落ち込みや不安が現れたりするのが特徴です。「表情がいつもと違う」と周囲が感じる変化は、心の不調のサインである場合があります。
医師のご紹介
Our Doctors
DOCTOR
精神腫瘍科・リエゾン精神科部長
菊田 恵義
Yasuyoshi Kikuta
- ◎専門分野
精神腫瘍科 リエゾン精神科
- ◎資格
-
精神保健指定医
精神保健判定医
日本精神神経学会認定
精神科専門医・指導医
日本サイコオンコロジー学会認定
登録精神腫瘍医
日本総合病院精神医学会特定指導医
精神腫瘍学指導者講習修了
臨床研修指導医
- ◎略歴
1999年三重大学卒業